01.腰痛の原因
圧迫骨折、椎間板ヘルニア、坐骨神経痛、筋筋膜性腰痛など腰痛を起こすものはたくさんありますが、腰痛の原因は大きく分けて2つです。
1つは体のパーツの一部が壊れているもの、これは骨折やヘルニアのように本来つぶれていない骨がつぶれてしまっていたり、出てはいけないところからヘルニアが出てきてしまっていることによる痛み。多くはレントゲン撮影やMRIに写りますので、病院で写真を見せられて病名を告げられます。
原因のもう1つは体に負担を掛けたことによる痛み。これは体のパーツはどこも壊れていないのに起こる痛みです。例えば、腰痛がない人でも立ち上がって大きく腰を反らしたまま10分間立ち続けたとしましょう。体操選手やヨガの先生でもない限り、大半の人は次の日に腰痛を起こします。その程度の負担であれば骨が折れたりヘルニアになったりはしませんので、パーツが壊れるまではいきませんが、体に負担をかけるだけで腰痛は起こります。
そしてこの「体に負担を掛けたことによる痛み(パーツが壊れていない)」というのはどこも壊れていないのでレントゲンやMRIに写りません。これが病院で「特に何も異常ないですよ」と言われても腰が痛い理由です。
気をつけたいのはこの負担を体が受け止めきれなくなった時、パーツが壊れてしまうことです。慢性的な痛みを原因がわからないまま放っておいたらやがてヘルニアになった、疲労骨折になったというケースが多く、また体に負担を掛けている原因をはっきりさせないまま治療をすると、負担が掛かりっぱなしになるので、疲労骨折やヘルニアの治りも悪いです。
病院で特に異常がないと言われた痛み、病名は聞いたけどなかなかよくならない腰痛は、生活のどの場面でどんな負担を掛けているか、見極めてから治療を進めないと効果が出ません。
02.腰が原因で起こる症状
月へんに要と書いて腰、月は肉体を表しますので、腰はまさに体の要です。
体を支える重要な部位である腰を痛めると腰だけでなく体のあちこちに症状が出ます。
腰が原因で起こる症状
・腰の痛み
・足のしびれ
・足の重だるさ
・太ももの異常な感覚
・腹部の奥の重さ
・足の指や足首の運動マヒ
・膀胱・直腸の機能低下
腰の痛み
最も多い症状です。腰に痛みが出ていることで腰のどこかに負担がかかっていることがわかります。痛みだけでることもあれば、他の症状と一緒に出ることもあります。
足のしびれ
脳から背骨の中を通り腰から出てきた神経はお尻をはじめ足全体に伸びていきます。腰で異常が起こると神経が不具合を起こし、この神経を通じて感覚や運動に異常が起こります。軽ければ軽いしびれや痛みが起こり、重症になると足に触れても感じなくなるなどの異常が起こります。
足の指や足首の運動マヒ
しびれと同じく神経の異常から起こります。特に末端である足の指や足首周りの筋肉がマヒを起こしやすいです。大半は運動マヒが起こる前にしびれや痛みが起こっていますので、しびれや痛みの段階で放置しないことが重要です。運動マヒが起こってしまうのは症状がそれだけ重くなっています。
腹部の奥の重さや痛み
背骨という言葉で腰の骨も背中の方にある印象がありますが、背骨はS字を描いており、腰は前方に反っているので、お腹の奥に腰の骨はあります。また、そこには腸腰筋という大きく強い筋肉があり、腰の異常でその腸腰筋に力みが出てくるとお腹の奥に痛みや重さを感じることがあります。逆に内臓の不調でお腹に痛みや重さがあると腸腰筋が緊張して腰痛を起こすことがあります。腰痛をみる時は腰だけでなく、内臓にも異常がないか確認することが重要です。
膀胱・直腸の機能低下
腰からくる症状の中で運動マヒと並んで深刻なのがこの膀胱と直腸の機能低下です。我々は普段あまり意識しませんが、会陰部の性機能や排泄の機能は神経によって事細かに調整されます。緊張してトイレに行きたくなったり、逆に便意がなくなった経験は誰しもあるはずです。
腰の神経の症状によってこれらの機能が低下することがあります。具体的には排泄を我慢できなくなったり、逆に思うように排泄できなくなったりします。
厄介なことに膀胱や直腸の症状は腰痛やしびれ、運動マヒが起こってない時にも起こることがありますし、一度重症になると回復が難しくなるので、こういった症状がある時は早急に専門医への受診が必要になります。
03.腰痛の解決策
腰痛は症状も原因も様々ですが、大きく次の3つの方法(+1)で解決します。
施術
施術の一番の目的は動きにくいところの動きを取り戻したり、硬いところの柔軟性を取り戻すために行います。
腰痛の場合、痛いのはもちろん腰で、腰の筋肉が痛みによって緊張してしまっていますが、そこの施術だけでは解決は一時しのぎになってしまいます。腰痛の場合、多くのケースで他のところに硬さがあります。具体的には股関節の硬さや背中でも胸の部分の硬さです。腰の負担を取り除くためにはそういった別の部分の硬さを改善させる必要があり、そのために施術を行います。
運動
姿勢不良で腰痛になるというのはかなり一般的になってきました。米国やヨーロッパ、オーストラリアなど先進国では研究データに基づき「腰痛改善のためにまずやるべきは運動療法による姿勢や動きの改善」という考え方が主流ですので、腰痛の場合はまずどんな運動をやるか考えるということが当然のように行われています。
腰痛の場合、重要なのは腹筋と背筋のバランスですが、やみくもに腹筋を鍛えても効果は上がりません。腰回りの腹筋や背筋に求められるのは一日中姿勢を保っておける筋肉の粘り強さです。そのため腰痛改善の運動療法では、一定時間姿勢を保つような姿勢トレーニングが重要になります。
また、腰を無理に使う動きのクセも腰痛の原因です。運動による体のクセづけでこういった体に負担のかかる動きを修正していきます。
日常生活指導
3つ目の方法は普段の生活での工夫です。腰痛の場合は仕事の時のイスと机の高さや距離、自宅でくつろぐ時の姿勢やイス・ソファー、歩くときに履いている靴、掃除機の使い方、洗濯物を干す高さ、寝具や枕の高さや硬さ、これらが変わると腰への負担が大きく変わります。ヒアリングを通して普段の生活の様子を教えていただくことで日常生活で知らないうちに掛けている体への負担の改善をしていきます。
+1 病院受診のおすすめ
症状をお聞かせいただき、みさせていただいた段階で医療機関を受診した方が良いと判断した時は病院への受診をおすすめしております。これまで腰に関連した症状で病院受診をおすすめしたケースは
・急激に発生した強い背中の痛み(圧迫骨折と判明)
・転倒して発生した腰の痛み(圧迫骨折と判明)
・運動中に発生した腰の痛み(ヘルニアと判明)
・限られた範囲の痛みとしびれ、皮膚の赤み(帯状疱疹と判明)
・膀胱の症状を伴う足のしびれと腰痛(ヘルニアと判明)
上記のようなものがあります。
04.腰痛ではこんなところを見ています
ヒアリング
・いつから、どこに、どんな症状があるか
・きっかけは何か心あたりはあるか
・過去にも同様のことがあったか
・痛み、痺れ、筋肉が動きにくいがあるか
・膀胱や直腸に違和感がないか
・尿失禁や尿閉(おしっこが出せない)がないか
・お仕事の性質や内容
・普段の生活で困っている動作
・趣味やそこでの姿勢、動き方
・(病院にかかったことあるかたは)病院ではなんと言われたか
・(病院にかかったことある方は)どんな治療をしたか
・他の病気がないか
・他に気になる症状がないか
姿勢や動き
・座った姿勢(前後のバランス、左右のバランス、ねじれ)
・頭、首、肩甲骨、骨盤の左右差
・楽な姿勢、正した姿勢の差
・座っている時のお尻の圧力の左右差
立った姿勢(前後、左右のバランス、ねじれ)
・左右の体重のかかる位置
・左右の体重のかかる割合
・片足立ちのバランス
・足の指の状態
歩き方
・速度、バランス、ふらつき
・左右の揺れ
・前後の揺れ
・歩いている時のねじれ
その他
・前屈カーブの調和
・後屈カーブの調和
・左右側屈カーブの調和
・左右捻りの差
・股関節の硬さ
・肩甲骨の可動域
・背部の筋肉の緊張具合
・腹筋の緊張具合
・寝返り、起き上がりの姿勢
上記は一部で、お客様の症状や状態によって変わります。